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賃金制度を変えただけでは社員はがんばりません。

 賃金制度を作り直したいという企業が岡山商工会議所の調査によると、40%以上に上るそうです。

 賃金制度のトレンドは、年功的な賃金制度から成果主義的な賃金体系への変更です。「がんばれば給料は青天井だ、だからガンバレ!」「若くても能力があれば役職者に積極登用するぞ」と口を揃えて経営者の方はおっしゃいます。
 しかし、安易な成果主義賃金制度への改革が、かえって社員のモチベーションを低下させて逆に業績低下、最悪の場合、せっかく戦力となった従業員の退職につながるケースがあるのです。

これではダメだ!年収は高いが不安定なA社の賃金

呉服販売業A社の事例をご紹介します。
A社は従業員50名の呉服販売業。業界は“斜陽業界”と位置づけられ、マーケットはどんどん縮小しています。
危機感を抱いた3代目のB社長はここ2年間で、退職金制度を廃止し、人件費を変動費化するために「業績連動型の賃金体系」を作り上げました。

労働分配率(人件費÷粗利)を33%と決めており、月額の固定給は年齢を問わず16万円〜20万円でした。
これに成果部分の上乗せとして、実績に応じて手当が加算されるというものです。

(退職した)一例としてCさん(28歳、妻と子供一人)の賃金は以下のようなものでした。

月例賃金:19万円×12=228万円
業績賞与:100万円+120万円=220万円
決算賞与:50万円
合計498万円

 28歳で年収約500万円というのは、かなりいい数字です。政府が出している公的な統計や、業界組合が出している年収統計と比べても、はるかに高い賃金を支給しています。
 しかし、先ほどのCさんを含め将来の幹部候補として期待していた、20代の従業員2名と30代前半の従業員1名が相次いで退職がしてしまいました。
Cさんの退職時にもらしたホンネは以下のようのものでした。

「業界の将来が暗い」
「数字をあげるための長時間労働に耐えられなくなった・・・」

「今はいいが、家族を養っていくには不安がある」


働く人には2タイプがある。

働く人には2タイプあるということを知っておきましょう。
一つは、経営者、もう一つは労働者。この両者は本質的に考え方が違う。当たり前ですが、これとっても重要です。

 経営者というのは結果がすべてで、やる気に満ち、自分ががんばっただけ収入が増えることに喜びを感じます。ハイリスク・ハイリターンに快感を覚えます。それと同じ発想で従業員に求めてしまう。「なぜ、収入が上がるのにがんばらないのか・・・?」と歯がゆい思いをします。

 一方で、従業員が求めているのはそういうことではありません。
 従業員がホンネで望んでいるのは「安定した生活を送りたい、贅沢したいわけではないが、ローンを組んで地元に家を建てて、子供にはせめて大学に行かせてやれるだけの安定した給料が欲しい」ということです。

 たとえ、賃金水準が一時的に高くても、来年はその半分になる可能性があれば生涯設計が立てられず不安でたまりません。
 ですから、少なくとも月例賃金は生活の安定を保証する水準でなければなりません。Cさんのように28歳で扶養家族がいるのに固定給が19万円はやはりダメだということです。


極端な成果主義(結果主義)はやってはいけない。


 A
社は、極端な歩合給的な賃金体系をとっています。その極端な歩合給的賃金体系によって、優秀な人が次々退職してしまいました。A社のような賃金体系では、今後同様の退職者が発生します。数字が上がらない人は早々に、3〜4ヶ月で退職していきます。さらに、そこそこ成果をあげて、定着していた優秀な人も遅かれ早かれ退職していきます。

 なぜなら、一度上がった年収レベルを維持するため、また、会社の期待に応えるためにはさらに成果を追い求め続けなくてはいけないからです。そのような上昇志向があり、ハングリー精神を持ち続けられる人が中小企業でどれだけいるでしょうか?もし、いるとしたら、恐らく自分で事業を始めてしまうでしょうね。
 
 普通はその仕事の仕方に疲れ果ててしまい、一度リセット(退職)したくなるのです。よくあるのは、ハイパフォーマー(優秀な人材)はその成果のピークで退職するということです。

賃金は不満要因である

 経営者にとっては業績は、意欲を掻き立てる要因となりますが、従業員にとっては給料というのは不満要因でしかありません。つまり、良くて当たり前で、他人と比べて見劣りがしたり、自分が考える自分の価値に給料がつりあっていないと感じるときにやる気を失わせる要因なのです。だから、給料が高いからといって120%の力を発揮して働くかどうかというのは無関係です。やる気をおこさせる鍵は別のところにあるのです。無報酬なのにボランティア活動に精力的に取り組む人や、逆に客観的に給料の高い大企業の社員や公務員が不満ばっかり言っているのを見れば分かりますよね。

 賃金制度を整備する目的は、@従業員の定着化とA人材獲得を容易にするB不良従業員を排除するということです。この目的を忘れずに賃金制度を設計する必要があるということです。